どこか気落ちしている様子のレーヴに、ジョシュアは気が気ではない。

 孫よりもかわいいと常日頃から溺愛している部下が、見たこともないような憂い顔で業務にあたっているのである。いつも通りの仕事ではあるが、今日に限って不都合なことでもあったのだろうか。

 レーヴの笑顔が元気の源と言っても過言ではないジョシュアは、彼女の笑顔を取り戻すにはどうするべきかと思案する。

 答えはすぐに見つかった。
 ジョシュアはいそいそとデスクからレーヴ御用達のパン屋の紙袋を取り出すと、応接用のテーブルの上へ広げ始めた。クロワッサンにデニッシュ、メロンパンにドーナツ。出てくる、出てくる、その数なんと二十個!
 見ていたアーニャも、ジョシュアを止めるどころか給湯室へ行ってコーヒーの準備をし始めた。

 早馬部隊王都支部のツートップがその調子なのである。他の面々が文句を言えるはずもない。少々早めではあるが、各々仕事を切り上げ、休憩に入った。

 外へ出る者、休憩室へ向かう者など休憩の場所はさまざまだが、応接セットを使える者は限られている。客以外はジョシュアとアーニャ、それから彼らに許されたレーヴだけだ。