「レーヴちゃん、どうしたんじゃ? 手をけがしたのか? どれ、じぃが手当てしてやろう」

 デュークのぬくもりを思い出して手を見つめていたレーヴに、声が掛けられる。
 聞きなれたしゃがれ声に、レーヴは弾かれたように振り返った。

「おじいちゃん……」

 振り返った先で、色あせた金の髪を洒落た風に整えた人相の悪い初老の男──ジョシュアが心配そうにそわそわしながら救急箱を取りに行こうとしていた。

 かつて【厳格なる駿馬】と恐れられた厳つい顔はいまだ健在であり、笑顔の子どもさえ恐怖に泣かせてしまうくらい恐ろしい見た目をしている。

 そんな彼だが、レーヴには自らをおじいちゃんと呼ばせ、自らはじぃと称し、彼女を孫以上に溺愛しているのだ。