レーヴの顔から血の気が引く。
 まるで不本意な犯罪に手を染めてしまったような絶望を滲ませながら、彼女は恐る恐る口を開いた。

「えっと……それだと、あなたは私に恋をしたせいで、若くして死んじゃうってこと?」

「魔獣には年齢の概念がないから、若いかどうかはわからない。でも、これだけは覚えていて。僕が恋をしたのはレーヴのせいじゃない。僕の勝手だ。例え君と結ばれずに消滅したって、僕は笑ってお別れできる。レーヴ、どうか気に病まないでほしい。そうは言っても、優しい君は気にしてしまいそうだけれど」

「そんな……」

 レーヴは「寂しいことを言わないで」と言いそうになって、口を閉ざした。
 今の彼女に、それを言う資格はない。

「ほら、レーヴ。郵便局についたよ。続きはまた今度にしよう?」

 そう言うと、デュークはさっさと回れ右をして行ってしまった。
 後ろ手に手を振るデュークに、レーヴは力なく手を振り返す。

「……はぁ」

 今日はいろいろありすぎて疲れてしまった。午後も仕事があるのに、大丈夫だろうか。

 力なく項垂れるレーヴの耳に、昼休みの終わりを告げる鐘の音が届く。彼女は慌てて、郵便局へ駆け込んだ。