「……うん」

「魔獣は人族が好きなんだ。僕らは人族から嫌われていることを知っているからあまり近づかないようにしているけれど、本心では近づきたくてたまらない。大概の魔獣は、我慢できなくなって運命の相手を探す旅に出る。魔獣が狩られていた時代も、僕らは人族に恋をすることをやめなかった。いや、やめられないんだ。魔獣や獣人にとって、人はそれだけ魅力がある生き物だから」

「魅力……?」

「ああ。レーヴは僕にとって、とても魅力的な女の子だよ。なにもかも、かわいらしくて仕方がない。魔獣は平均して百五十年ほどの寿命があると言われているけれど、君と一緒に生きるための代償なら安いものだと思った」

 聞き捨てならないセリフに、レーヴは思わず口をふさいだ。

「だい、しょう? 魔獣は、寿命を代償にして獣人になるっていうの⁈」

「獣人は、恋が成就しなければ消滅してしまうけれど、人族になれたとしても、恋した相手が死ぬと寂しくて心臓が止まってしまう。だから、獣人になった段階で魔獣の寿命をまっとうすることはまずない。それに、老いた魔獣は恋をしない。だから、寿命を対価に獣人化しているのだろうっていうのが、僕の考え」