受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「ねぇ、レーヴ。こちらの方は……?」

「私の幼なじみのジョージよ。近衛騎士をしているわ」

「よろしく、ジョージくん」

 デュークが愛想よくあいさつをしても、ジョージは胡散臭そうに見遣るだけだ。
 失礼な態度を取られても、デュークは不愉快なそぶり一つ見せない。
 レーヴはそんなデュークを、尊敬のまなざしで見た。

 レーヴは知らないのだ。
 デュークはレーヴ以外に向ける感情を持ち合わせていない。レーヴといると彼女のことで頭がいっぱいになって、その他のことはどうでもよくなる。
 ジョージに対しては無関心しかなく、紳士的にあいさつをしているのも人族のマナーとして最低限のことをしているに過ぎなかった。

「幼なじみということは、彼女とは仲が良いのかな」

「ああ、かなりな」

 やけに強気で答えるジョージに、レーヴは内心「どこがだよ」と思った。
 一体いつ、ジョージはレーヴと仲良くなったのだろう。
 レーヴは本気で心配になった。もしや彼は若年性健忘症なのでは、と。