(そもそも、恋が成就しなかったら消滅って、どの段階でそうなるの?)

 真剣に考えるその隣で、当の獣人さんはレーヴと手を合わせながら「レーヴの手は小さいね」なんてのんきに笑っている。

(この人、消滅するかもしれないって自覚がないんじゃ……)

 マリーの話によれば、魔獣は相当な覚悟の上で獣人になるらしい。
 だとすれば、決定的な状況──例えばレーヴに好きな人ができてデュークにそれを告げるとか──にならなければ、この曖昧な関係が続くということだろうか。

「それはそれで楽だけど、不誠実ね」

「レーヴ、心配事? 僕で良ければ話を聞くよ?」

 ポロリとこぼれた言葉に心配の声をかけられて、レーヴは「おまえのことじゃーい!」と心の中で突っ込んだ。

「ううん、なんでもないよ。散歩しながら帰ろうか」