「なんか……思っていたよりなんとかなりそう……?」

 レーヴに恋なんてできない。
 ずっとそう思って生きてきたけれど、思い込んでいただけだったのだろうか。

 彼女が知っている男といえば、父と、幼なじみのジョージくらいのものだ。
 最も近しい父は浮気性でめったに帰宅せず、母は苦労してレーヴたち四姉妹を育て上げた。

 ジョージも父ほどではないがひどいもので、「俺が好きなら努力しろ」と亭主関白を気取り、歴代彼女をポイ捨てし続け、彼を恋愛対象として見ていないので当然努力なんてするはずもないレーヴにはブスだなんだといちゃもんをつけ、挙げ句の果てには「結婚できなかったら嫁にもらってやる」である。

 父親不在の女系家族で育ち、長らく男性と接してこなかったレーヴが、一般的には珍しい部類である父やジョージを男の典型だと思い込むのは、いたし方ないことだったのかもしれない。

 父とジョージ。二人のろくでなしを見続けて、彼女は気づいてしまったのだ。
 恋なんてするもんじゃない、と。
 どんなことをしても満足してくれず、結局は目の前から居なくなってしまうのなら、報われないじゃないか。