いつもならばベンチに座るなりいそいそとパン屋の包みを開けるレーヴだが、今日の彼女はちょっと違った。
 ぼんやりと遠くを見つめながら、彼女は呟く。

「子どもの面倒をみるデューク、すてきだったなぁ……あんな顔なのに茶目っ気もあるところがかわいいし、普通にしている時の威圧感も慣れてきたらかっこよく見えてきたし。指先を舐められたのは恥ずかしかったけど……あの色気に失神しなかっただけでも称賛されるべきじゃない? あの色気、恋愛初心者の私には毒よ、毒! あの時の私、よく頑張った。偉いぞ、私!」

 面倒なことを押し付けられたと思っていたのはたった数日前のことだというのに、デュークへの好感度は急上昇している。

 さすが美形とデュークの美貌を褒め称えるべきなのか、それとも恋愛経験値ゼロゆえのレーヴの耐性のなさを心配するべきなのか。

 ここにクララベル夫妻がいたら、マリーは「あらあら」と上機嫌に笑い、ウォーレンはレーヴの警戒心のなさを心配したに違いない。