早馬部隊王都支部に配属されているレーヴの仕事は、主に郵便配達である。

 午前中は郵便物を仕分けし、終わり次第馬に乗って配達。そして今は、ランチタイムということもあり、仕事場から最も近い中央公園の、いつもの定位置である丘の上のベンチにいた。

 中央公園の真ん中には、噴水が設置されている。
 あたたかな陽気と水の音は癒やし効果抜群だが、レーヴは噴水周辺には絶対に近づかないと決めていた。
 噴水周辺は、見目麗しい男女や地位の高い者が交流する場となっていて、暗黙の了解でふさわしくない者は叩き出されるからだ。

 レーヴの地位はそう高くない。名前こそ有名ではあるが、彼女にはまだ実績がないためだ。
 これが戦時中であれば話は違ったかもしれないが、この平和な時代に彼女の位が上がることは、おそらくないだろう。

 レーヴはそれで良いと思っている。
 平和でなければ、えりすぐりのパン職人たちが凌ぎを削るこの王都で、愛するパンの食べ比べをすることができなくなってしまう。
 それどころか、王都にいることさえできないだろう。なにせ、彼女は早馬部隊所属。早馬部隊とは、戦場で伝令を伝える部隊なのだから。