新しいパンの構想をするレーヴは楽しそうだ。
 果たしてそのパンは誰のおなかに収まる予定なのか。
 ネッケローブは非常に気になったが、そこで会計が終わってしまう。

「ありがとう。じゃあ、いってきます」

「おう、いってらっしゃい」

 おまけのラスクを忍ばせた紙バッグを手渡す。
 ルンルンと足取り軽く出ていくレーヴに手を振りながら、ネッケローブは独言た。

「いいなぁ、命短し恋せよ乙女って感じで……命短しは困るけどよ。頑張れよ、レーヴ」

 ネッケローブは、妻を想った。
 結婚当初はかわいらしかった彼女も、今は立派な母である。
 恋していた頃が懐かしいが、今の彼女はそれ以上に愛おしい。

 ネッケローブは気が早いとは思ったが、レーヴの結婚式にはパンで祝いのリースを作ってやろうと、デザインを思い描くのだった。