初デートの翌日のことである。

 レーヴはいつになく上機嫌な様子で自宅の玄関ドアを施錠すると、小さな庭にある飛び石をピョンと跳ねながら、家の前を通る道へ出た。

 隣の家に住む老夫婦、メレル夫妻は、いつも通りまったりと庭先の花々に水やりをしていたのだが、そんな彼女の様子に「あらあら」「おやおや」と目を見張る。

「おはよう、レーヴちゃん」

「おはようございます!」

 このかわいらしいお嬢さんが隣へ越してきてから早七年。
 彼女が十八の頃から見守ってきたが、こんなに元気いっぱい幸せいっぱいな姿を見るのは初めてである。

 ほんのり色づいた頰は淡い薄紅色をした薔薇のよう。いつも眠そうに半分閉じている目は、今朝はキラキラと虹でもかかりそうなくらい輝いていた。

「レーヴちゃん、なにかいいことでもあったのかい?」

「いいえ? なにもないですよ」

 声が弾んでいることを、彼女は自覚していないのだろうか。

 明らかに何か良いことがあったに違いないが、経験豊富な彼らは何も聞いたりしない。
 こういう時は、十中八九色恋に関することに違いないのだ。迂闊(うかつ)につつけば、これから出勤しようとしている彼女の邪魔をしかねない。
 彼女の幸せをお裾分けしてもらいたい気持ちは多々あるが、良き隣人である彼らは、ニッコリとほほえんで彼女を送り出したのだった。