受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 もういっそ、救護室へ逃げ込んでやろうかとも思った。
 だけど、自分が筆頭で悪口を言っているくせにレーヴが悪く言われると途端にキレるやっかいな幼馴染みを思い出し、思い止まる。

「どうにかしなくっちゃ」

 すっかり人気のなくなった厩舎に、馬の気配は感じられない。
 軍事パレードの日に放置される馬なんて、いるわけがない。
 だがもしかして、まさかのまさかでロバくらいは残っていないかな、とレーヴは辺りを見回した。

「万事休すってやつかな」

 ロバどころか、普段は自由気ままにウロチョロしているニワトリさえ鶏小屋でおとなしくしているのを見て、レーヴは悲しくなってきた。

「ああもう。ほんっと、嫌になるなぁ。どうしてこんなことをされなくちゃいけないわけ? 私、何かした? むしろ、されている方なんですけど!」

 レーヴはただ、幼馴染みにつきまとわれているだけだ。
 彼は彼で、レーヴのことを女と認識しているかも怪しい。