受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 魔獣は魔術を使う獣である。それは、幼い頃からよくよく聞かされていた。
 忘れそうになるが、獣人は魔獣が変化した姿だ。つまり、デュークが魔術を使えることは、当たり前のことなのだろう。

「僕と相性が良いのは木属性。だからこうして、植物に干渉することができる」

「植物に干渉……この国では役立つ能力ね」

 冬が長いロスティでは、育てられる農作物の種類に限りがある。
 デュークの能力はおそらく、国にとっても喉から手が出るほどほしいものに違いない。なにせ、ロスティは冬の蓄えを豊かにするためだけに軍事大国になったような国なのだから。

(名前を聞いて深い森みたいだと思ったのは、あながち間違いでもなかったのね)

 木属性と言われて想像するのは、草食系の動物だ。鹿、牛、山羊、そして最も親しみのある馬。
 魔王や堕天使のような見た目から想像するに、山羊だろうか。渦を巻いた山羊の角を生やしたデュークは、恐ろしく似合っている。うっかり「なんて禍々しくて美しいのかしら」と酔いかけて、レーヴは慌てて口をつぐんだ。