受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 デュークが落ちたクローバーを拾い上げる。
 爆ぜたはずのそれは焦げることもなく、それどころか三つ葉から四つ葉になっていた。

「獣人ってすごいのね」

「そう?」

 デュークは、まるで手品みたいに魔術を使う。
 魔術は素質がある者にしか使えないものなのだ、とレーヴは習った。しかも、魔法陣を描いて、むずかしい呪文を唱えて、と行使するまでにさまざまな工程を踏む必要もある。
 だというのに、デュークはそれらの工程を一切することなく使った。
 これをすごいと言わずして、なんと言うのだろう。

「獣人は魔法陣も呪文もなしに魔術を使えるのね」

「ああ。魔獣はそれぞれ相性の良い魔術を、息するように使う。身近な魔獣だと……そうだな……魔兎は知っているかな? 彼らは一般的に愛らしい見た目をしているけれど、火属性の魔術と相性が良い。たまに魔の森で火災が起きるのは、彼らが原因であることが多いよ」