「ちょっと、持っていてくれ」

「え? ああ、はい」

 一体何をするつもりなのか。
 言われるがままクローバーを持ったレーヴは、すぐに後悔することになった。

 ──ポン!

 小さな破裂音を立てて、レーヴの指先でクローバーが爆ぜる。
 反射的に放り投げたクローバーは、ポトリと地面に落ちた。

「な、ななななな!」

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まるレーヴに、デュークが遠慮がちに笑う。

「笑い事じゃない!」

 怒るレーヴに、デュークは「すまない」と謝りながら降伏のポーズを取った。

「魔術を使ったんだ。もちろん、君に害を与えるつもりはなかった」

 いたずらが成功した子どもみたいに、デュークが無邪気に笑う。気品ある顔に似合わず、茶目っ気も持っているらしい。
 まさかそんなことをされるとは思ってもみなくて、レーヴは毒気を抜かれて苦笑いを浮かべるしかなかった。