(俺様にひざまずけ、とか言いそうな見た目なのになぁ)

 悪い気分ではないが、申し訳ない気持ちになる。
 謝罪するのもおかしい気がして、レーヴはおずおずと彼の手を取った。

 どんな反応をするのだろう。差し出してきたのはあっちだから、避けられることはないはずだけど、とレーヴがデュークを見ていると、彼は幸せいっぱいの顔で微笑み、それから力加減を探るようにゆっくり握り返してきた。

 じんわりとなじむデュークの体温は、レーヴのものより少し高い。
 獣だからだろうかと隣に立つ彼を見上げれば、帽子の中身がピクピクと動いているのが見えた。

(耳が忙しなく動くのは、緊張しているからかしら)

 もしも彼が馬の獣人なら、おそらくそうなのだろう。
 自分と同じように戸惑い空回っているらしいデュークに、レーヴはそうなら良いのに、と思った。

 獣人は総じて美形だと聞く。人間離れした美貌は男であっても身構えてしまう。
 そんな美貌の獣人がレーヴ相手にオロオロしているのかと思うと、親近感が湧いてくるような気がした。