受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

(たたくか、あるいは……)

 戸惑いはあるが、嫌悪感はない。
 レーヴは差し出された手のひらに、そっと自分の手を乗せた。

「あっ。す、すまない。バスケットを預かるつもりだったの、だが……」

 レーヴの行動にデュークは一瞬驚いたように目を見開いて、素早い動きで手を引っ込めた。

(紛らわしい! うぅ……恥ずかしい……消えてしまいたい……)

 せっかくの決意が、萎んでいく。
 デュークの顔を見るのも怖くなって、レーヴは俯いた。

「じゃあ、お願いします」

 俯いたまま、レーヴは持っていたバスケットを突き出す。

「はい、お預かりします」

 しっかりした手が、バスケットを受け取る。かすかに触れた手は熱く、弾かれるように顔を上げたら、真っ赤な顔をしたデュークと目が合った。
 彼は、バスケットを持っていない方の手で頭を掻きながら、何か言いたそうに唇をモニョモニョさせている。