「レーヴ、どうかしましたか?」

 レーヴが立ち止まっていることに気づいたのだろう。デュークが振り返る。
 突然目にした麗しい横顔に、レーヴは息を飲んだ。
 ちょっと冷静に見られるようになったとは言っても、まだまだ不意打ちには対応しきれない。
 真っ赤になった顔を隠すように、レーヴは顔の前で手を振った。

「なっ、なんでもない、です!」

 そんな彼女にデュークは首をかしげ、「僕としたことが」と何かに気がついたようだった。
 長い足であっという間にレーヴとの距離を詰めると、デュークは彼女へ手を伸ばす。

「あの……?」

 差し出された手を、レーヴは困惑の表情で見つめた。

「どうぞ」

 どうぞ、とは。
 差し出された手のひらの意味がわからないほど、レーヴは鈍感ではないつもりだ。いや、子どもだってわかるだろう。「ほら」と手のひらを差し出されれば、誰だって同じ反応をする。