とはいえ、この猶予はレーヴにとってすばらしい結果をもたらした。
 いつも通りに過ごして自分のペースを取り戻した彼女は、デュークのことを少しだけ冷静に見られるようになったのだ。

 今までのは、言わば奇襲されたようなものである。
 予期していない時、予期していない場所で、予期していない方法で攻撃を加えられた。
 もしかしたら吊り橋効果を狙ってのことだったのかもしれないが、効果はあまり芳しくないとレーヴは思う。

(それに……疑う余地もないくらい好きって訴えてくる獣人に、そんな状態で対応するのは失礼ってものじゃない?)

 レーヴを好きになるなんて、かなり変わっていると思う。
 それでも、せっかく好きになってくれたのなら、相手のことを知ろうと努力するのが誠意というものだろう。

(まずは、お友達から……!)

 恋愛初心者であるレーヴには、それが精一杯。
 目の前を歩く広い背中を申し訳なさそうに見つめて、レーヴはギュッと拳を握った。