「それにしても、気が長い計画だこと!」

 そんなに好きなら、とっとと素直になれば良かったのだ。

「きっと、もう手遅れね」

 アーニャが見た感じでは、レーヴはひざまずいていた青年のことをそれなりに認めているようだった。
 やけに警戒心が強い彼女は、初対面の人に攻撃的になりがちだ。アーニャだって、なついてもらうまでに数カ月を要した。
 そんな彼女がそばに寄られて恥ずかしそうにしているなんて、どう考えたって脈ありだろう。

「ジョージ、かわいそう……とは思わないわね」

 孫の嫁にと望んでいるジョシュアには悪いが、アーニャはあの見知らぬ青年を応援するつもりだ。
 天邪鬼でいつまでもプロポーズできないばかりか、レーヴから出会いを遠ざけて「仕方ないから結婚してやる」なんて言う上から目線野郎は応援するに値しない。

「がんばって!」

 アーニャはそっと振り返り、かすかに見えるレーヴの家に向かってエールを送った。