ジョージ・アルストロ。ジョシュアの孫で、レーヴの幼なじみ。
 彼は、かわいらしい見た目を取り立てられて、王族のそばに侍ることが多い近衛騎士の任についている。
 見た目も身分も文句なし。だが、アーニャは彼が嫌いだ。

『レーヴが三十路になっても結婚できなかったら、嫁にもらってやるよ』

 そんなかわいげのないことを言う男なんて、願い下げである。
 二十五歳にもなって好きな子をいじめることでしか好意を表せない男なんて、とアーニャは顔をしかめた。

 レーヴが自身をかわいげのないつまらない女だと思っているのは、幼い頃からジョージが心ない言葉を掛け続けてきたせいだ。
 そのせいでレーヴは、この歳になっても恋をしたことがない初々しい少女のまま。

 彼女がまだ新人だった頃、今のままでは悪い男に騙されてしまいそう、と心配したものだ。よく今まで無事だったと不思議に思ったが、その理由はすぐにわかった。
 彼女を守る二人の騎士、ジョシュアとジョージが目を光らせていたのである。
 かたや凶悪犯顔の歴戦の戦士、かたや近衛騎士ともなれば、健全なロスティの、アーニャの息子のような男はなかなか手を出せない。
 このままいけば、レーヴはジョージの宣言通り、彼の嫁になることだろう。