早馬部隊王都支部の最年少であるレーヴは、ジョシュアやアーニャを筆頭とした仲間たちから大事にされている。
 長年新人が入ってこなかった早馬部隊の期待の新人ということもあるが、子や孫くらい歳が離れているのでかわいくて仕方がないのだ。最近はお節介にも彼女の結婚相手を相談していたくらいで……。

「でも、いらなそうねぇ」

 窓の向こうでは、レーヴのそばにひざまずく青年の姿が見える。
 恋愛に興味なんてないと豪語していたレーヴが、頰を赤らめて恥ずかしそうにしているのを見て、アーニャの胸に熱いものが込み上げた。

「うちの息子にはもったいなかったわね」

 レーヴはかわいい。
 本人は否定するだろうが、彼女は本当にかわいいのだ。
 結婚相手の候補にアーニャの息子も入っていたが、常々もったいないと思っていたのだ。
 顔も性格も身分も、可もなく不可もなく。至って凡人な息子は、無害で扱いやすいことだけが美点である。
 レーヴがお嫁さんにきてくれたらとても嬉しいが、恋愛結婚できるならその方が良いに決まっている。

 アーニャはもう見るべきものは見たと、静かに窓から離れて支部へ戻る道を歩き出した。