そんな中、第二王子アリスタルフはひっそりと出奔した。
 彼が使用したとされる転移魔法陣は、エカチェリーナが飛ばされた地に設定されていたという。

 もしかしたら、彼はエカチェリーナを追ったのかもしれない。
 思えば、エカチェリーナがレーヴを監禁した場所は、王族か総司令部でなければ使用できない仕組みになっている。アリスタルフが手を貸した──そう考えれば、腑に落ちるものがあった。

 とはいえ、これはあくまで可能性の一つに過ぎない。
 アリスタルフはエカチェリーナを好いていたけれど、彼は王族の代表として表舞台に立つことを厭うていた。

 真実は闇の中。
 アリスタルフもエカチェリーナも、ここにはいない。もう会うこともないだろう。