デュークには、オロバスの家名を与えられた。
 デューク・オロバス。それが、現在の彼の名前である。

 同時に、彼にはロスティの最北部を治める辺境伯の地位が与えられた。
 極寒の地であるこの地域に村などなく、攻めてくる国もない。一見すると厄介払いのようにも思えるが、至極真っ当な人事だった。

 作物が実らない北方の地を、麦でいっぱいにすること。
 それが、彼らに与えられた任務だ。

 木属性の魔術を扱うデュークは、どんな場所でも望むままに植物を生やせる。その力を見込まれてのことだった。
 表向きにはディンビエの侵略から国を救った英雄として辺境伯となったデュークを、誰もが祝った。