受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「ここに、キスをしても?」

 しおらしくお伺いを立ててくるデュークに、何を今更、とレーヴは苦く笑んだ。
 昨夜されたことを思えば、なんてことはない。

「いいよ。でも、一回だけにしてね?」

 もとより一回きりのつもりだったデュークは、レーヴの台詞におとなしく頷いた。
 彼女の胸元に唇を寄せ、痣へキスを落とす。痛々しい肌はまだ過敏になっているのか、デュークの唇が触れるとレーヴは小さく喘ぐような声を漏らした。

「んっ……」

 愛らしい声に、つい手が腰に伸びそうになる。
 デュークは己を叱咤すると、押し当てた唇から魔力を流す。

 ひんやりとした秋の朝のような温度を感じて、レーヴがわずかに身をよじった。
 唇が離れないようにより強く押し当てながら、デュークは願う。せめてこの呪いの刻印が、彼女にとって誇れるものになりますように、と。