受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 明け方近くに気を失う寸前、彼女が呟いた言葉は「お尻フェチ、恐るべし」だったほどだ。

 ひとまず、「恥ずかしいけど忘れたくない、濃密な甘さを孕んだ夜だった」とだけ言っておく。
 それ以上のことをつとめて思い出さないようにしながら、レーヴは頭を振った。

 思わず奇声を上げてしまいたくなるようなこの気持ちは、どこへぶつければ良いのだろう。
 レーヴがこんなありさまだというのに、デュークはポヤポヤとたんぽぽの綿毛のように幸せそうな空気をまとって微笑んでいる。

 腕の中に収まるレーヴを思い切り抱きしめてクスクス笑う彼は、頭のネジが数本外れてしまったようにしか見えない。もっとも、つられるように笑い返してしまうレーヴも人のことは言えないのだろうが。