「ねぇ、デューク。まだ走れる?」

 正直に言えば、休みたいところではある。
 だが、ここで休みたいと言えば、レーヴは他の馬に乗るだろう。そんなことは絶対に許せなかったデュークは「もちろん」と深く頷いた。

「話があるの。二人きりになれるところに、連れていってほしいな?」

 レーヴの精一杯のおねだりに、デュークの胸が高鳴る。
 小首を傾げて上目遣いをするなんて、どこで覚えたのだろう。レーヴの甘く蕩けるような視線に、デュークは知らず生唾を飲む。

「駄目かな?」

 駄目なものか! とデュークは思った。
 言葉を言えない代わりに、行動で示す。背を向けてせがむように尻尾を振ったら、意を汲んだレーヴがよいしょと背に跨った。