受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 満足に舗装されていないディンビエの通りを、馬車が走っていく。
 首都だというのに、ディンビエの道はロスティの田舎道みたいに舗装が雑だ。道だけでなく、街並みもその空も、レーヴが育った田舎の町に似ている。
 星が見え始めた空を見上げ、レーヴは達成感に満ちた吐息を吐いた。

「ふぅー……なんとか、任務完了、だね」

 レーヴの隣で、デュークが褒めるようにブルルと鳴く。

「褒めてくれているの? ありがとう。でも、まだ一仕事、残っているんだよねぇ」

 そんなの聞いてない、とデュークが不思議そうに首をかしげる。レーヴは安心しきった顔で「あるんですよ」と力なく笑いながら、生まれたての子鹿みたいにガクガクする膝を踏ん張り、デュークの頭を両手で捉えた。黒々とした目を、真正面から見据える。