受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 馬車の窓から顔を覗かせた男が、レーヴに軽く会釈する。年齢はジョシュアと同じか、少し下くらいだろうか。灰色の髪を撫でつけた上品そうな老紳士だ。

 おそらく彼が、大使なのだろう。
 レーヴが最敬礼を返すと、彼は人好きしそうな顔で微笑んだ。

「大切な書状を届けてくれてありがとう。総司令部から連絡をもらった時はまさかと思ったが、本当にこの短時間でなし得るとは……。おかげで、こちらに優位に話ができそうだ。魔の森と魔獣のことは、安心して私に任せてもらいたい」

「はっ! ありがとうございます!」

「大使館に部屋を用意してある。今日はゆっくり休むと良い」

 老紳士に、レーヴは感謝を込めて深々とおじぎした。