受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 ここにも、レーヴの伝説を知る人がいたようだ。感激したように手を差し出してくる男に、彼女は苦笑いを浮かべて握手に応じようとする。
 だが、デュークが威嚇するようにいななき、男は弾かれたように顔を引き締めた。

「任務中に、失礼いたしました!」

「いえ、大丈夫です。それより、書状をお渡ししてもよろしいでしょうか?」

「はい、よろしくお願いします!」

 わかりやすい嫉妬に思わずレーヴはデュークを見たが、彼はそれどころではないようだ。名前さえ知らない男を、威嚇するように睨み続けている。

(それをかわいいって思っちゃうんだから、私も大概よね……)

 レーヴから書状を受け取った男が、馬車へ走っていく。