草原を抜けてディンビエの首都へ着くと、デュークはポクポクと優雅な足取りで街を歩いた。

 ディンビエは騎馬民族の国ではあるが、ロスティのように早馬が来たら道を譲るという文化がない。むしろ、騎乗している側が避けるべきという文化のため、そうせざるを得ないのだ。
 デュークは、ディンビエの人から見ても魅力的に映るらしい。異国の女が乗っていると見ると、男たちは強気になるのか、レーヴは数人の男に「馬を置いていけ」と脅迫めいた言葉を掛けられた。

 おまえにはもったいない馬だ。

 そう言われて、レーヴがおとなしく従うわけがない。彼女は馬上から殺気を込めた視線で男たちを見下ろし、黙らせた。女性にそんな視線を向けられたことがないのか、男たちはひどく怯え、逃げていく。