レーヴは今まで、こんなにも心許す相手はいなかった。家族でさえも、だ。

 父は家に寄り付かず、母親は苦労している。必然的に残された妹の面倒をみるのはレーヴの役目になった。
 母の苦労を思えばわがままも言えず、妹のためなんだからと大抵は我慢して、言いたいことも呑み込んだ。

 そうして彼女の忍耐力は鍛え抜かれたのだ。エカチェリーナを筆頭とする理不尽な扱いにも耐えうるくらい、レーヴは強くなった。その代わり、彼女は甘え方を忘れてしまったのだけれど。

 そんなレーヴを甘やかし、そして無意識に甘えるように仕向けたデュークは、なんて罪作りな人だろう。

 レーヴはデュークのことが好きで好きでたまらなかった。恥ずかしくて口にできないけれど、愛していると言っても過言ではない。彼がいない未来なんて、とても考えられなかった。