進むにつれ、鬱蒼とした森は少しずつ光が差すようになってくる。

 出口が近いのだろう。
 もう日が落ち始めているのか、紫色の霧と混じる夕陽の赤が毒々しい。

 入る時と同じように、森を囲む低木を飛び抜けたら、柔らかな夕陽の光がデュークとレーヴを包んだ。目の前に、朱色に染まった広大な草原が広がる。
 まるで赤い海のような風景に、レーヴは小さな歓声を上げた。凍りつく白い海は見たことがあるが、真っ赤な風景というのは初めてである。
 嬉しそうな声ではしゃぐレーヴに、デュークは走る速度をやや緩めた。

(いけない、いけない。まだ任務中なのに)

 デュークが一緒だと、つい気が緩んでしまう。
 レーヴは、無意識に彼のそばなら安全だと思っているのかもしれない。

(デュークのことを、家族以上に思っているのかも)