受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 振り落とされないようにしっかりと手綱を握り直したレーヴは、馬の胴を挟む足に力を入れた。
 魔馬の脚は、信じられなくらい速い。魔獣保護団体本部から魔の森までの距離を一気に駆け抜けてしまった。

 あっという間に到着した魔の森の入り口で、デュークが立ち止まる。
 レーヴはデュークが緊張していることを感じ取り、同調するように息を潜めて様子をうかがった。

 魔の森は初めてだが、こういうものなのだろうか?

 紫色をした霧は気味が悪いし、伸びた木の枝はシワだらけの老人の手のように見える。今にも取って食わんとしているように思えて、レーヴはブルリと体を震わせた。

 突然、デュークがキュイーンと高くいなないた。この鳴き声は、警告の意味を持つ。
 レーヴはすぐにデュークの意を汲むと、手綱を持つ手に力を込めた。

 その時である。