受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 徐々に速度を上げるデュークのたてがみが、風に揺れる。
 乱れたそれを指先で直していると、デュークがほんの一瞬だけ振り返った。
 黒々とした彼の目を、レーヴは熱のこもった目で見返す。するとデュークは、取り乱したかのように足並みを乱れさせた。

(え、うそ……デュークが動揺してくれた……?)

 彼の熱い視線に動揺していたのは、いつだってレーヴの方だった。
 だけど今は、レーヴが彼を乱している。それだけのことが、嬉しくてたまらない。

「ふふっ」

 心が浮き立つ。動揺させたこともそうだが、それ以上に目が合ったことが嬉しくて仕方がなかった。ふわふわとした気持ちは、このままどこかへ飛び立てそうな気分にさせてくれる。