そもそも、エカチェリーナが余計なことさえしなければ、デュークは今も獣人だったし、もしかしたらレーヴの告白がうまくいって人になっていたかもしれない。
 レーヴの気持ちを気づかせてくれたジョージには今は感謝しかないが、エカチェリーナは許せない。

(帰ったら殴らせてもらおう! 絶対に!)

 とはいえ、エカチェリーナが母親譲りの手練手管でデュークを籠絡していなくて本当に良かった。獣人の一途さは聞き及んでいるが、それでも心配になる。

 だって、エカチェリーナは美人だ。そんじょそこらにいるようなレーヴと違って、彼女は性格以外パーフェクトなのである。顔良し、家柄良し、将来性ありともなれば、誰もが嫁にと願うに決まっている。

 レーヴは改めて、デュークのいちずな気持ちを愛しく思った。
 そしてそれは彼女の口から、ころんとこぼれ落ちる。

「ああ、良かった」