レーヴが頰をグニグニと揉んでいると、準備を終えたデュークが目の前にやって来る。

「なにをしているの?」と不思議そうに首をかしげる彼に、レーヴは「なんでもないよ」と笑ってごまかしながら、その太い首筋を撫でた。

「さぁさぁ、急いで。二人とも、気をつけていってらっしゃい」

 にこやかな笑みを浮かべて手を振るマリーに見送られながら、魔獣保護団体本部を後にする。
 ふと視線を感じて後ろを振り返ると、古城の窓にエカチェリーナらしき姿を見つけて、レーヴは威嚇するように肩を怒らせた。

(できることなら、エカチェリーナにもう一発打ち込みたかった……!)

 馬上で、レーヴはわなわなと拳を握りしめる。
 呪いの話で有耶無耶になってしまったが、エカチェリーナとの決着はついていないのだ。