受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 あっという間に、応接室は荒れ果てる。ソファもテーブルもひっくり返り、花瓶は壁にぶつかって粉砕された。
 ロディオンはどうにかして彼女たちを引き離そうと手を出したが、レーヴの勢いに押し負けて手を引っ込めざるを得ない。
 万が一にもレーヴを傷つけたらデュークに申しわけが立たないと、腰に下げた剣を出すことも躊躇われた。

 キャットファイトというよりゴリラ同士の縄張り争いのような壮絶な戦いは、次第にレーヴの分が悪くなってきた。近衛騎士と早馬では、明らかに近衛騎士の方が実戦向きだ。
 体をよろめかせるレーヴを見て、ロディオンはとうとう抜刀を決意する。狙いは当然、エカチェリーナだ。
 彼はそっと気配を消して二人の視界から姿を消すと、次の瞬間には昏倒させた娘を抱きかかえていた。