受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 金切り声を上げるエカチェリーナの頬を、ロディオンが再び打つ。

「黙りなさい、リーナ」

 底冷えする声で窘められて、エカチェリーナがようやく口を閉じる。

 ロディオンは改めて、娘の育て方を間違えてしまったのだ、と思った。軍人として優れた自慢の娘だが、人の気持ちを思いやれない哀れな人に育ってしまった。ここまできたら、親として、ともに償っていくしかないだろう。
 ロディオンはソファから腰を上げ、レーヴに対して深々と頭を下げた。

「私の娘が、大変なことをした。本当に、申し訳ない。あなたを拉致監禁し、さらにデュークへあらぬことを吹き込んで、二人の恋を阻害したことを、謝罪する」

 レーヴは自身より遥かに高位の人物から頭を下げられたことに動揺したが、彼から告げられた言葉に「はぁ⁉︎」と怒りの声を上げた。