小気味良い音を立てて平手打ちされたエカチェリーナは、驚愕の表情を浮かべてロディオンを見返す。
 その様子に、レーヴはまるで生まれて初めて殴られた人みたいだ、と思った。

「いい加減にしろ、リーナ! 私はおまえの育て方を間違えてしまったようだ。おまえがしたことは、国への謀反と同義なのだぞ⁉︎ たとえおまえがアリスタルフ殿下に求婚されるほど気に入られているとしても、軽い罰では済まされない!」

「わかっていますわ、そんなこと」

「そんなこと? そんなこととはなんだ! おまえは死ぬかもしれないのだぞ⁈」

「あら、お父様。それくらいの覚悟、獣人の娘なら当然持っております」

「なんっ……!」

 ケロリと死の覚悟を持って実行したのだと言われて、ロディオンはショックを受けたようだった。ズルズルとソファへ座り込んだ彼は、頭を抱えて項垂れる。