マリーの指揮のもと、準備がバタバタと整えられていく。
 そんな中、レーヴとラウム親子は応接室に通されていた。

 応接室には、重苦しい空気が立ち込めている。重圧に耐えかねたレーヴは、向かいの席に腰掛けるエカチェリーナに向けて、口を開いた。

「ねぇ、エカチェリーナ。私を閉じ込めた部屋に、ジョージが代わりに閉じ込められたんだけど……大丈夫なの?」

「……ここへ来る前に助け出しましたわ」

 レーヴの質問にツンとしながら答えるエカチェリーナの横顔を、ロディオンがしかめ面で睨む。エカチェリーナはそんな彼に反抗するように、そっぽを向いた。

「そうなんだ。なら良かった」

「……デューク様は馬の姿になってしまったわ。これであなたはジョージ様と婚約するしかなくなったわね」

 この期に及んでまだレーヴに噛みつこうとしている娘の頬を、ロディオンは叩いた。