デュークを振り払ったレーヴが、涙を流して泣いている。
 袖を噛まれたのがそんなに嫌だったのだろうか? そこまで嫌っているなら、迎えに来なければ良いのに。

 人の姿だったら問いかけることもできたのに、馬の姿ではそれもできない。
 もどかしさに、デュークの心は落ち着きなく騒めいた。

 突いて出たため息は、そんな気持ちを反映したように苛立たしげだ。荒々しい鼻息に、レーヴの肩がビクリと大きく跳ねるのが見えた。

 デュークは細心の注意を払って、レーヴに気づかれないように慎重に彼女を見た。
 レーヴは、嫌悪というにはあまりにも頼りない表情をしている。まるで「置いていかないで」「こっちを見て」と迷子の子どものように不安そうな顔をしていて、デュークの素直な耳はヘニャリと倒れた。