ロスティの魔獣研究ではまだ知られていないことだが、恋した相手が手に入らないと知った獣人は、時に心中を図ることもある。理性のない魔獣のように食べてしまう場合もあるし、消滅する際に起こる魔力の爆発に巻き込む場合もあった。

 デュークは心から、レーヴの幸せを願っている。
 たとえデュークが消滅したとしても、彼女はどこかの誰かと恋をして、結婚して、子を産んで命をつなぎ、長く生きてほしいと思っているのだ。
 けれど、相反するように「自分のものにならないのなら、誰の手にも渡らないようにしてしまいたい」と思わなくもない。

 恐ろしい考えを振り払うように、デュークは首を振る。
 こうならないためにデュークは刻々と迫る消滅の時を待っていたというのに、レーヴの声で名前を呼ばれてつい出てきてしまった。自制心の緩さに、悪態をつきたくなる。