突然現れた馬をナチュラルにデュークと認識している自分に、レーヴは戸惑う。その動揺は、無意識に頬を抓るというしぐさに現れていた。
 当然の痛みに顔をしかめながら、レーヴは「うそぉ」とつぶやく。

 目と鼻の先に、「もう一度会いたい」「乗せてほしい」と思っていた馬がいる。
 レーヴはなんてできすぎた話だろうと思った。会いたいと思うあまり幻覚を見ているのでは、と自分自身が信じられない。

 踊り場に立つ青毛の馬を見つめ、何度もまばたきをするレーヴに、馬は「よくわかったね?」と言うように鳴く。その耳はピンと立ち、尻尾はブウンブウンと鞭のようにしなっていて、喜びを表していた。

「うわ……」

 ぶるり、とレーヴの全身が震えた。
 もう会えないはずの魔馬のデュークが、目の前にいる。
 まるで前世で離ればなれになった運命の相手と再び巡り合えたような不思議な感覚に、レーヴは息を飲んだ。