「え……」

 レーヴは驚いた。あんぐりと開けた口から、咥えていた指をそろりと出す。
 景気付けのつもりで指笛を吹いたら、馬が来た。まさか城内に馬がいるなんて、一体誰が思うだろう──と考えて、レーヴは「そうだ、ここは魔獣保護団体なんだった」とつぶやいた。

 しなやかな筋肉に、艶やかな黒の毛並み。耳も長すぎず短すぎず、理想的な形だ。無駄なものも足りないものも見当たらない、完璧なボディ。美馬コンテストがあったら、ぶっちぎりの優勝である。

(歳を重ねて、もっと綺麗になったみたい……)

 レーヴが持っている言葉では褒めきれないくらい、彼は綺麗だ。
 そう、彼は──。

「って、デューク⁈」