受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「いつ消滅するかもわからないデュークを、任務に同行させるというのですか？」

　なんてひどい、と言うマリーに、ロディオンは感情のない声で「そうだ」と答えた。

「消滅寸前の獣人は、もとの魔獣の姿に戻る。デュークは今、魔馬の姿のはずだ。それならば、この程度の任務などあっという間に片がつく。栗毛の牝馬がそばにいるならすぐに消滅することはまずないし、彼女の気持ちがデュークのもとにあるのならば、特別な儀式を行うことで人になることができる」

　突然聞かされた驚くべき話の数々に、マリーは頭をガンッと殴られたような気分になった。
　一瞬呆けそうになった頭をなんとかフル回転させて、理解に努める。

「魔獣の姿に、特別な儀式……？」

　マリーはブツブツと呟いたかと思えば、今度は怒りを忘れたようにキラキラと目を輝かせた。
　物語の続きをねだる無邪気な子供みたいな視線に、ロディオンは生理的に無理とばかりに逃げを打つ。