「ねぇ、ご存じ? この城には理性のない魔獣をたくさん保護していますの。今は魔の森が危険な状態で、森へ帰ることもできない。そのせいで彼らはとても苛立っておりますわ。私、もしかしたらうっかりあなたを魔獣の前に放り出してしまうかもしれないけれど、良いかしら? 反省する気も、謝罪する意思もない非常識なお嬢さんだもの。それくらいしたって、国は何も言わないでしょう。むしろ、手間が省けたと喜んでくれるかも。ああ、それとも、人体実験に協力してもらえるかしら? 獣人の子どもなんて珍しくて腕がなるわ。大事に大事に飼い殺しにしてあげますから、ご安心くださいませね?」

 不穏な言葉の数々に、二人は体を寄せ合って恐怖に戦く。
 ロディオンは改めて娘とともに床へ額を擦り付けるようにして土下座した後、「まだ話がある」と言った。

「娘も、私と妻も、然るべき処罰を受け入れるし、受け入れさせる。だが、今はそれよりもデュークのことだ。彼の同族として、私にできることがまだ残っている。せめて、それを成してから、身柄を拘束してくれないだろうか」