ロディオンからエカチェリーナの正気とは思えない所業とデュークの引きこもりの原因を聞いたマリーは、頭が痛くなりそうだった。

 とりあえず、貴人向けの特殊な牢獄とやらからレーヴが脱出できたのは喜ぶべきことだろう。
 疑ってごめんなさいと、マリーは心の中でレーヴに謝った。

「どういう教育をしたら、こんなねじ曲がった子になるのです?」

 マリーは目の前で正座している美女を見ながら、グリグリとこめかみを揉んだ。

【傾国の美女】と名高い母と元獣人の父を持つ彼女は、同性の目から見ても美しいの一言に尽きる。
 だが、彼女の恋愛観は明らかにおかしい。

 エカチェリーナは、幼い頃から元獣人である父から『好きな人には尽くすべし』と言われ続けてきた。
 ロディオンからすれば、尽くして尽くして尽くしまくったおかげで妻を得たわけだから、成功の秘訣として教えていたのだろう。