受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「レーヴさんにイライラするのは、きっとそのせいね」

 恵まれた境遇にありながら、それを放棄するなんて、と。羨ましくて、腹が立つ。
 苛立ちをぶつけるように、マリーは持っていたペンを握った。手の中で、ガラス製のペンにヒビが入る音がする。

「……」

 虫も殺せないような顔をしているが、マリーも軍人である。研究者には不要な力だと思っていたが、意外なところで役に立ちそうだ。

「レーヴさんがもしものこのこやって来たら、返り討ちにしてやりましょう」

 獣人に優しくしない子なんて、マリーは大嫌いだ。
 不穏な笑みを浮かべながら、マリーはインクが漏れそうなペンをハンカチで包み、ポケットへ仕舞い込んだ。