レーヴの髪色のような栗色の薔薇は、日に一輪ずつ増えていった。
 まるでそれは彼女へ向けた最期の贈り物のように思えて、マリーは毎日薔薇を丁寧にスケッチした。摘み取ることは簡単だが、そうすることでデュークの寿命がさらに減ってしまうかもしれない。研究者としては失格かもしれないが、マリーにはできなかった。

「はぁ……嫌だわ」

 スケッチし終えたマリーは、窓の外を眺めた。頰に手を当ててため息を吐く姿は、憂いに満ちている。
 向こうに見える魔の森は、いつも通りだ。濃い魔素が紫がかった霧となって、うっすらと森を覆っている。

「異常なし、ね」

 マリーは視線を、魔の森から城内の中庭へ向けた。
 彼女の視線の先では、ウォーレンのような体格の良い男たちがせっせと草むしりをしている。
 彼らは、魔獣保護団体本部の新たな仲間たちだ。数日前、隣国ディンビエが魔の森を焼き払うかもしれないという報告を受け、護衛として国から派遣されてきた。